<著作からの抜書き>

【災害教訓の進化と発信】

 今日9日、人と防災未来センターの防災館がリニューアルオープンした。今までの被災を中心とした展示に、新たに復興の展示が付け加わった。その復興の展示では、住宅再建や復興まちづくりの中での悲しみと喜びが、リアルに表現されている。無数の人間復興のドラマが幾重にも織り込まれていて、重量感のある展示となっている。
 この復興の展示が付け加わったことで、震災の教訓の発信は二眼レフ的な大きなパースペクティブを持つことになる。被災の教訓と復興の教訓は、車の両輪のようにどちらも欠かすことができない。被災の教訓は、命を守ることの大切さを教えてくれる。復興の教訓は、夢を実現することの大切さを教えてくれる。人間として生きていくには、生命が欠かせないが、生命だけでは生きていけない。希望や夢がなければ生きていけない。そのことを、私たちは復興の過程から学んだ。いかにして夢を育むか、いかにして夢を実現するか、その手がかりをこの復興の展示から学んで欲しい、と思う。
 ところで、昨年末に中越地震の被災地である山古志村を訪れる機会があった。仮設住宅からの引っ越しが完了し、故郷での新しい生活が始まっていた。そこでは、自然景観にとけこんだ木造の復興住宅など、阪神・淡路の教訓を学びつつそれを乗り越えた復興の姿をみることができた。教訓は、継承されるだけではなく進化するということに気づかされたのである。
 となると、人と防災未来センターも、教訓を発信するだけでなく教訓を進化する施設として、更なる発展をめざさなければならない。進化のための交流と共創ができる場としての変革を目指さなければ、と思う。

神戸新聞<随想>より

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