<室﨑益輝のつぶやき>

【消防法等の防災法規の限界性】

 恐れていたことが、悲しいことに現実となってしまった。私は、今年の7月のラジオ番組「NHKジャーナル」で、「インターネットカフェや個室ビデオ店などの個室密室型の店舗が野放しになっているので、死者の出る火災が起きかねない」と、警告した。それは、経済優先人命軽視の風潮の中で、規制の網をかいくぐって危険極まりない施設が急増していることを、憂えてのことであった。
 さて、今回の個室ビデオ店の火災では、消防法や建築基準法などの防災安全法規のあり方が問われている。建築基準法はともかく消防法については特段の法律違反も無いのに、15名もの尊い生命が失われてしまったからである。結果論かもしれないが、生命の番人であるべき法が機能していない、といわれても仕方がない。私は、このことを防災関係者(私もその一人)や行政関係者は厳粛に受け止めなければならない、と考えている。
 「新しいタイプの施設の増加に法の改正が追いつかない」という行政側の言い分もよく理解できる。がしかし、ことは生命に関わる重大問題である。ここは、人命最優先の立場から考えなければならない。ということで、防災に関わる法規については、予防原則にたって、災害が起きてから後手に回って法改正をするのではなく、災害起きる前に先手必勝で法改正をしなければならない、と思うのである。
 がしかし、起きる前に法を改正しようとすると、権力の乱用である、営業や建築の自由を奪う、規制緩和に逆行するとの、メディアを含む社会あげてのブーイングが殺到し、規制強化が思うように出来ないのである。といって、責任転嫁をしても始まらない。15人の尊い犠牲に報いるためにも、防災法規の限界を改めて認識し、その速やかな改善を図るようにしなければならない。
 ところで、この法規のあり方に関わって、忘れてならない重要な留意点が一つある。それは、法規は安全のための最低限の基準を定めているにすぎず、それを守っておれば必ず安全だということにはならない、ということである。法は、安全のための必要条件ではあるが十分条件ではない、ということを肝に銘じなければならない。建物の実情あるいは危険のレベルに応じて、安全のためのプラスアルファがいるということである。
 このプラスアルファは、安全のための社会的規範あるいは防災的リテラシーがなければ成立し得ない。処罰されるから法律を守るというのではなく、お客さんが大切だから安全に努力するという姿勢が大切なのである。安全のためにいかなる設備が必要か、安全のためにいかなる体制が必要かを、法に適合しているかどうかの前に、経営者も管理者も設計者も考えるようにして欲しい。
 この限りにおいて、今回の火災は法規の問題としてだけではなく、安全規範の問題あるいはその規範をないがしろにする経営体質の問題としても、しっかり議論しなければならない。(なお私は、建築基準法については、排煙設備、重複距離、内装制限など、重大な違反があったと考えている。この「危険な袋小路状態」が合法として建築基準法において許されているとしたら、言語道断である。このことについて、今のところ建築行政関係者からのコメントが無いのは、とても悲しい。)

2008年10月07日

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