<室﨑益輝のつぶやき>

【政治経済のこれからを左右する四川震災復興】

 8月の10日から15日に、災害看護支援機構の黒田裕子さんや社会安全研究所の木村拓郎さんなどと、四川地震の被災地を訪れた。平野部の都市被害をみるために都江堰、中山間部の農村被害を見るために北川県と綿陽市の2つの集落を、比較的時間を掛けてみることが出来た。現場の生の声を聞くということで、仮設住宅の皆さんや農村の被災者の皆さん、支援ボランティアの皆さんとの話に、できるだけ時間を費やした。
 震災は、その地域社会が抱えている最も根本的な問題をあぶり出す、と言われているが、今回の地震は、少数民族問題などの政治問題、格差社会問題などの経済問題、巨大都市化問題などの都市問題などが、この地震被害と復興問題に大きな影をおとしていることを痛感した。地震断層が少数民族居住地と漢民族居住地の境界に存在していること、地震が市場主義の荒波にあえぐ山間部や農村部を襲ったことなど、地震の政治経済的意味を象徴している。復興は、この政治経済的課題を如何に解決するかの試金石といってよい。
 ところで、こうした課題の克服をはかるうえで、希望を抱かせる新しい芽が育っている。被災者が被災現地での自力再建に向けて立ち上がっていること、日本人の若者も含めて多くのボランティアが様々な障壁を乗り越えて立ち上がっていること、いくつかの民間企業が社会貢献の立場から被災地支援に立ち上がっていることなど、新しい社会の息吹を感じることが出来た。その息吹を現地で感じられたことだけでも、四川に行って良かったと思っている。

2008年8月18日

ページトップへ